• Rakuten PLAY

未来から金属製の"悪夢"がやってきた!

未来から金属製の"悪夢"がやってきた!

映画紹介人/お笑いコンビ・ジャガモンド斉藤です。 毎月第4金曜日に”配信で鑑賞できる作品”を1本選んで、あーだこーだ書いていきます。 居酒屋で誰かと喋ってる感じの再現なので、酒のつまみだと思ってお付き合いください〜 今回は、9月26日から公開されている『ターミネーター』4Kレストア版(40周年 ジェームズ・キャメロン監修)について、一体何がすごいのか?をワイワイ書いて参りたい。 よろしくお願いします。

  • たくさんの「いいね」ありがとう!

    90

  • 作成日時:
    2025/09/26 10:31

ターミネーター

制作年: 
1984年
ターミネーター

映画『ターミネーター』(1984年)の根底に流れているのはホラー映画の精神だと思う。  これは詳しく後述するが、本作はあまりにも暴力的だし、ホラー映画然としている作品なのだ。公開時に本作を鑑賞した観客にとって、ラストで炎の中から登場するエンドスケルトンの衝撃は凄まじかったと思う。  しかし、続編作品はどれもSFバトルアクションに傾倒していき、ホラー性は失われていくので、パブリックイメージとして『ターミネーター』にホラー映画の印象はあまりない。  殺戮マシーンだったターミネーターは爆発的に認知が広がり、市民権を得たことで、大衆から馴染みやすいお友達へと変化していった。そのきっかけでもある続編『ターミネーター2』でアーノルド・シュワルツェネガー演じるT-800が刺客ではなく、用心棒として送り込まれてきたことと同じように。  この現象は他のホラーアイコンでも同じことが起きている。ゴジラ、貞子、ゼノモーフ、マイケル・マイヤーズなどのキャラクターにも当てはまる。彼らが元々内包していた得体の知れない未知の恐怖も今ではすっかり虚勢されてしまった。彼らのビジュアルだけで心の底から震える人間はもういないだろう。  言っておくが、これは決して悪いことでもない。映画は商業としての側面がデカいので、ヒットしてなんぼの世界。続編が作られ、他のメディアでパロディ化され、おもちゃやTシャツが大量に生産され、消費され、ファンダムが形成されていき、俳優も製作陣も次の仕事に繋がっていくから生産が持続できる。  その代償として、作品が持つ恐怖を内包した神秘性は失われていくということだと思う。  これは映画という産業が持つ難しさでもあり、宿命なんだ。  映画『ターミネーター』もまさにその運命を辿った。  斉藤さん、なんでそんなにジャンルにこだわるんですか?と思ってる人がいる気がするので、答えると、今回においてはホラーと認識することで浮き彫りになる作品の骨格があると思うから。  あと、先述した別作品のキャラクター群を見てもらえればわかるんだけど、エポックな作品の一作目というのは「ちゃんと怖い」要素が練り込まれていることが多い。どんな映画、作品においても"恐怖"というのは、観客に対して強い訴求力を持っているんじゃないか?というのが持論。だから、”恐怖描写”を怠っている映画がなんかぬるく感じてしまうんだと思う。これはいつか詳しく綴りたいと思っていますが、とにかく今日は『ターミネーター』にホラーという物差しを当てて、あーだこーだ言及していきたい。  まず他のホラー作品との類似点について言及したいのだけど、そもそも監督のジェームズ・キャメロンはジョン・カーペンターの映画『ハロウィン』を参考に『ターミネーター』を制作している。  『ハロウィン』が分類されるスラッシャー映画というジャンルには「ファイナルガール」と呼ばれる最後まで必ず生き残る女性が登場するわけだけど、『ターミネーター』のサラ・コナーはまさにファイナルガールだよね。母親も友達も助けに来てくれたカイル・リースも全員、殺され、サラだけが生き残るって物語だもん。  初期のスラッシャー映画に登場する殺人鬼はゆっくり歩いてくることが多いんだけど、ターミネーターはまさにそれで、ジリジリと着実にヒロインを追い詰める。サラの親友が彼氏とのSEX後に殺されるのだって、スラッシャー映画のお決まりの展開なんだ。よく言う性行為が死亡フラグだってやつだよね。  あと、T-800は未来から来てるんだし、最新テクノロジーで正確にターゲットを探しだせると思いきや、これが違うんだ。誰がサラ・コナーだかわかんないから、とにかく電話帳の”サラ・コナー”という名前の女性を片っ端から殺していくんだよ。やり方がアナログすぎるし、人の命をなんとも思っていないマシーンらしいなんとも暴力的な作戦だよね。  殺人鬼の正体がマシーンで、タイムトラベルしてくるっていう設定はSF然としているけど、やってることは完全にホラー映画なんだよ。  それに加えて、ジェームズ・キャメロンのこれ以降の作品が『アビス』『エイリアン2』『アバター』シリーズなどSF映画が多くて、ホラー映画的なコンテンツを手がけてないから『ターミネーター』がホラーだという認識が薄れがちなのかもしれない。後追いである僕らみたいな世代からしたら、よりそうなんじゃないかな。  キャメロンは非ホラー的エンターテイメントを手がける名手だと思われてる節があるけど、実際どうなんだろう?あの大傑作『タイタニック』だって、表面上は大号泣の感動ストーリーだけど、中身は完全に乗り物パニックだよね。『ポセイドン・アドベンチャー』をやりたかったんだよ。それに、船が沈むときに落下してスクリューに激突する人間をわざわざ残酷に描いているところなんかを見ると、恐怖という表現が上手くて、自覚的にやっていることがよくわかる。  ホラー映画との類似点について話を戻すと、サラは2作目の『ターミネーター2』ですっかり勇敢な兵士となり、未来でのスカイネットの暴走を止めるべく、コンピューター会社などの破壊工作を繰り返す過激な人間へと変貌を遂げているわけだけど、映画『ハロウィン』の直接的続編でもある『ハロウィン』(2018)で、主人公のローリーがサラのような人生を送っているのは興味深いよね。日本では2019年公開だったけども、当時、ローリーがサラ・コナー化していると話題になったけど、そもそも『ターミネーター』は『ハロウィン』のエピゴーネンなんだ。  ようやくだけど、じゃあ具体的に本編の内容はどうなの?と。  バーでの乱入と発砲、警察署での皆殺し、T-800が自ら目玉をえぐるあそこ…怖いシーンはたくさんあるのだけど、先にも触れたクライマックスでのエンドスケルトンが登場し、カイルとサラを追い詰めるあのシークエンスが僕にとって至高であり、トラウマ級だって話がしたい。  何度も何度も来るクライマックスというのは、キャメロンの十八番なんだけど、この時点でその芸は確立してた。必死に逃げ惑って、最終的にT-800をトラックごと爆破!カイルとサラは抱き合い、これで大団円かと思いきや、背後の炎に包まれた瓦礫の中から金属で出来た骸骨(エンドスケルトン)が現れる。  「もう嫌!!!!いいかげんにして!!!!」と言わんばかりに絶叫するサラ!はい、まず、ここ!恐怖とケレン味が同時に襲ってくる最強のシーンだ!  そもそもキャメロンが思いついたのはこのシーンはここだったらしい。黒歴史と言われているデビュー作『殺人魚フライングキラー』(1981)の現場でのトラブルと失敗によって眠れない夜を過ごしていたキャメロンは当時、うなされながら「炎の中から現れる金属製の骸骨に追われる」夢を見たらしい。どんだけ大変だったんだよ!  目を覚ましたキャメロンはすぐエンドスケルトンのスケッチを書いたと言われている。もうこの話は出来すぎているので、どこまで信用したらいいのかわからないけど、あの登場シーンから放出される迫力が異常なのは確か。  サラ・コナーとキャメロンにとってエンドスケルトンの登場は”終わらない悪夢”の象徴だ。その悪夢は足を引き摺りながら彼らを追う。決して足が速いわけじゃない。だけど、どんな状態になっても必ず目的を達成しようとするマシーンならではの恐怖がそこにはあった。しかも、彼らが逃げ込んだのはプレス機などが置いてある工場。機械によって支配されてしまう未来を暗示している。彼らは金属に囲まれた地獄に迷い込んでしまったんだ。  このシークエンスの恐怖には当時の映像表現が一役買っていると思う。CGも発達していない80年代の映画だから、エンドスケルトンの全身が映る引きのシーンはミニチュアを使ったストップ・モーション・アニメ。バストアップなどの寄りのシーンでは原寸大の模型を使って撮影されていて、これがまぁ怖い。  アニメーションの語源は「生命のないものに命を吹き込む」という。  本作でのエンドスケルトンはまさに、生命のない無機物に命を吹き込んでいるわけだが、ここに妙な不気味さがある。ストップ・モーション・アニメで撮影しているシーンの動きはカクカクしていて、現代でよく見るCGのようなスムーズな動きはない。今の観客のリテラシーからすれば、チープに感じてしまうかもしれないが、この時代ならではの独特の動きがやけに気持ち悪い。背景は実写の現実世界なのに、エンドスケルトンだけが、非生物なのに生物のような動きをしてる。この「なのに」という矛盾こそがこのシーンの嫌な部分に繋がっている気がする。  また、非生物を生物然と動かすことになんとなく背徳感を覚えるような気がしている。超えてはいけない線を超えているような気がしてくるのではないだろうか?  そして寄りのカットになると、原寸大サイズのエンドスケルトンが人間の手によって動かされるわけだが、この映像表現のハイブリット感も恐怖の秘密だろう。ストップモーションで映されるエンドスケルトンは合成ということも相まって、実在感が無いのに、寄りのカットになると、急に”そこにいる感”が出る。この混ぜこぜの気持ち悪さが恐怖に結びつくのかもしれない。  ごめんなさい。頑張ってみたけど、この恐怖の言語化はまだしっくりこないから、引き続き考えていきたい。  どうだろう?やっぱり『ターミネーター』はホラー映画だよね。  ネット記事によると、新作映画をキャメロンは考えているみたい。『シン・ゴジラ』みたいに1作目の志をリブートする映画があるように、『ターミネーター』シリーズも恐怖映画として復興してほしい。全身真っ青な人間が大自然を飛び回るのもいいけど、原点回帰して、観客がドン引きするような暴力的で恐ろしい『ターミネーター』を僕は観たい。

ターミネーターの詳細を見る
この記事がよかったら「いいね」

たくさんの「いいね」ありがとう!

90

あなたが見た作品の記事を書いてみませんか?
友達やSNSにシェアしよう!

TERMINATOR, THE © 1984 CINEMA '84, A GREENBERG BROTHERS PARTNERSHIP. All Rights Reserved

  1. 本記事の感想は個人の意見です。
  2. 作品情報は投稿時点のものであり、内容が変更・終了している場合があります。
  3. 公式情報などもあわせてご確認ください。
  4. 利用規約に反する内容は、削除されることがあります。
この記事を報告する