
【感想】三宅健の演技が琴線に触れた理由『サンセット・サンライズ』
去年、劇場で観た『サンセット・サンライズ』。劇場を出たあと、外の空気がやけに優しく感じたのを覚えています。先日、配信を見つけて「今の自分でもう一回浴びたい」と視聴。劇場では物語の流れに乗って気持ちよく連れていかれたのに、配信だと表情や間、会話の“言い切らなさ”まで拾えて、別の映画みたいに沁みる瞬間がありました。家のソファで観る田舎町の時間、妙に効きます。 菅田将暉さんと井上真央さんが出演している、という安心感も大きいです。菅田さんは、軽やかに見えて胸の奥に小さな棘を隠しているような芝居がうまいし、井上さんは感情を大声で説明しないのに、ちゃんとこちらの心拍を上げてくるタイプ。ふたりがいるだけで、作品の温度が一定に保たれる感じ。観ている側が取りこぼしそうなニュアンスを、さりげなく手元に戻してくれる。そんな信頼があります。 ……ただ、劇場で観たときから私の目を釘付けにしたのは、三宅健さんでした。恥ずかしい話ですが、これまで三宅さんの出演した映画やドラマを観たことがなくて、私の中のイメージはテレビのバラエティ番組で見る印象がほぼ全部。気遣いができて、回転も速くて、場の空気を明るくする人。 ところが本作では、その“テレビで見ていた私のパブリックイメージ”が良い意味で裏切られました。 私も劇中の舞台になったような田舎の港町の出身です。だからこそ町の空気感はわかる。三宅健さんが演じるタケは、その田舎町にいるマイルドヤンキーそのもの、なんです。 派手に威嚇してくるわけじゃないのに、近づくとちょっとだけ緊張する見た目。なのに、話してみたら案外ちゃんとしていて、むしろ世話焼き。怖そうな見た目だけど情に厚い、あの感じ。しかも、ただ「優しい人」で終わらせないのが巧いところで、優しさの中にある意地とか照れとか、“引けなさ”みたいなものがちらっと覗く。そこがリアルで、妙に生々しい。 誰かの先輩で、誰かの後輩でもある。地元の人間関係の中で、偉そうにふるまうこともできず、かといって子どもでもない。どこにでもいるたたずまい。立ち方の重心、視線の置きどころ、返事のトーン。全部が「こういう人、いるいる」に着地していて、演技してる感がないんですよね。マイルドヤンキー役って、記号的にやろうと思えばいくらでも“それっぽく”できるはずなのに、三宅さんはそれをやらない。だから人物として信用できる。 怖そうな見た目、かっこいい見た目……そういった角度ではなく、“この人は今日もこの町で暮らしている”という生活感の角度で三宅さんは画面に立っている。その結果、菅田さんや井上さんの繊細な芝居ともちゃんと噛み合って、作品全体の手触りが一段ふくよかになる。これはもう、脱帽です。 劇場で一度観たはずなのに、配信で見直してあらためて良さに気づく映画って、実はけっこうありますよね。『サンセット・サンライズ』はまさにそれ。菅田さん、井上さんの確かな座標がある映画の中で、三宅さんが町の体温を上げていた一本でした。
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- 作成日時:
- 2026/03/10 08:24
- 更新日時:
- 2026/03/10 08:38
サンセット・サンライズ
コロナ禍でリモートワークになった東京の会社員が、釣りのために三陸へお試し移住。よそ者と見る地元住民との交流を通じ、新たな暮らしと絆を見つけていくヒューマンコメディです。
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