
“聞こえる孤独”を抱えて──『コーダ あいのうた』の優しさと痛み
『コーダ あいのうた』は、とても静かで、とても強い映画だった。大きな事件が次々と起きるわけではない。淡々と日常が描かれていく。しかし、その日常の中に、ろう者の家族の暮らしや孤独、そして愛情が丁寧に詰まっている。 主人公は、家族の中で唯一耳が聞こえる女の子。つまり“CODA(Children of Deaf Adults)”だ。彼女は家族を支えながら生活している。電話対応をしたり、周囲との橋渡しをしたり、自然と「自分が家族を守らないといけない」という役割を背負っている。 しかし、彼女には彼女の人生がある。そして、歌うことが好き。ここが本当に良い。夢が特別すぎないのだ。ただ「好き」がある。その純粋さが、観ている側に自然と「応援したい」という気持ちを生ませる。 ろう者の家族は、決して“不幸”として描かれていない。普通に働き、笑い、怒り、生きている。そこが本作の上手いところだと思う。ただ一方で、“聞こえない”ことで生まれる孤独やズレも確かに存在する。その積み重ねが差別につながることもある。この描き方が非常に誠実だ。 そして主人公自身もまた孤独なのだ。家族は彼女を愛している。でも、彼女の歌声を聞くことはできない。彼女の才能を、感覚として共有できない。この切なさが本当に胸に来る。 特にコンサートの場面。音が消え、無音になる演出は見事だった。あの瞬間、観客も“家族の側”に立たされる。ただの感動演出ではなく、映画だからこそできる体験になっている。あそこは本当に素晴らしい。 家族の描写も良い。皆それぞれ不器用で、時にぶつかる。でも根っこには「彼女が好き」という共通の想いがある。この温かさが作品全体を支えている。特にお父さん。本当に最高だ。言葉にしきれない愛情がちゃんと伝わってくる。 そして歌の先生。彼の存在も大きい。若者をただ褒めるだけではなく、的確に導いていく。才能を見抜き、背中を押し、時には厳しく接する。そのバランスが素晴らしい。こういう大人に出会えるかどうかで、人生って変わるんだろうなと思わされる。 『コーダ あいのうた』は、障がいをテーマにしながら、それだけに留まらない作品だ。家族の物語であり、若者の成長物語であり、“自分の人生を生きる”ことについての映画でもある。 静かだけど、深く心に残る。優しさと痛みが同時に存在する、本当に素敵な作品だった。
たくさんの「いいね」ありがとう!
71
- 作成日時:
- 2026/05/10 21:51
コーダ あいのうた
ろう者の家族を持つ女の子のお話。自分だけ耳が聞こえる。そんな彼女は歌が好き。淡々とお話は進んでいく。その淡々とした日常でのろう者の暮らしが見えてくる。上手い。差別もあるが、ろう者であれ生活をしている。しかしろう者であることで健常者にはない孤独がある。それがまた差別につながる。うーん、いろいろ考えさせられるね。主人公はとても良い子。家族のために生活している。健常者の自分が家族を守らないといけない、でも自分の人生もあると悩み始める。歌うのが好き。あー応援するっきゃないじゃん。家族は彼女の歌声を聞けないので、彼女の可能性を感じ取ってあげられない。健常者の彼女もまた孤独。コンサートで無音になる演出にシビれる。見事すぎるでしょこのドラマ。家族も彼女が好き。皆がいろんな想いを持っているが、そこは共通。お父さんあんた最高だよ。そして歌の先生が良い。若者を綺麗に導く。こういう大人になりたいね。アドバイスが的確でどんどん成長していく。あの先生大好きだ。
あなたも作品の評価を入力してみませんか?
コーダ あいのうたの★評価を入力する



