
伊藤健太郎の"狂気と暗部"が刺さる映画3選
伊藤健太郎という俳優を、さわやかなイケメン枠で見ていた時期が私にもあった。だが、ある時期から「この人は何かが違う」と感じ始めた。 そんな伊藤が今、ドラマ「100日後に別れる僕と彼」で性的マイノリティが自分らしく生きられる社会を願う正義感あふれる青年・春日佑馬を演じている。浅原ナオトの遺作となった同名小説を原作に、草野翔吾監督が丁寧に映像化した作品だ。繊細で実直な役どころが話題を集めているが、実はこうした「内側に何かを抱えた人物」を、伊藤健太郎は真っすぐに体現できると私は思っている。その確信の根拠となった映画が3本ある。 まず2017年公開の『デメキン』。お笑い芸人・佐田正樹の自伝小説を原作にした青春不良譚で、伊藤健太郎の映画初主演作でもある。赤髪リーゼントという記号的な不良像を、単なるコスプレにせず、怒りと孤独を内側から滲ませて体現しているのが印象的だった。荒削りなのに、画面から目が離せない。初主演でこの重力はモノが違うと思った。 続く2019年公開の『惡の華』が、個人的には3本の中で最も異質だ。自意識過剰な文学少年が問題児(玉城ティナ)に精神的に支配されていく物語で、伊藤健太郎は崩れていく自我を過剰にもなく薄くもなく、絶妙な温度で演じきった。玉城ティナの狂気に飲み込まれそうになりながらも、主人公として画面の中心にいる。その拮抗がずっと心地よく怖かった。 2022年公開の『冬薔薇』は、監督の阪本順治が伊藤健太郎に当て書きした一作だ。堕落した生活を送る青年を演じた本作、セリフの少ないシーンでも伊藤の顔と体が雄弁で、「当て書きされる俳優」になったのだという納得感があった。約2年ぶりの映画復帰作という事情を抜きにしても、この作品での静かな凄みは際立っている。 不良、崩壊する自我、堕落した青年——3本に共通するのは、美しさとは対極にある「人間の汚い部分」をど真ん中で引き受ける役どころだ。そこに逃げずに向き合える俳優が、伊藤健太郎だと私は思っている。
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- 作成日時:
- 2026/05/27 16:27
- 更新日時:
- 2026/05/28 19:14
デメキン
お笑い芸人・佐田正樹の自伝小説を映画化した青春不良譚。幼少期に「デメキン」と呼ばれいじめを受けた正樹(伊藤健太郎)は、強さを求めて喧嘩に明け暮れ、やがて福岡最大の暴走族総長へと成り上がっていく。親友(山田裕貴)やヒロイン(今田美桜)との関係を軸に、荒々しくも青臭い青春の輝きと痛みを描く。伊藤健太郎の映画初主演作だ。
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押見修造の人気コミックを原作に、脚本・岡田麿里、監督・井口昇が映画化。山間の地方都市に暮らす文学少年・春日高男(伊藤健太郎)は、憧れのクラスメイトの体操着を盗んだところを問題児・仲村佐和(玉城ティナ)に目撃される。秘密の代わりに理不尽な"契約"を迫られた春日は、仲村に精神的に支配されながら自らのアイデンティティを崩壊させていく。
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阪本順治が伊藤健太郎に当て書きして脚本を執筆した作品。横須賀の港町で専門学校にも通わず他人からカネをせびる堕落した生活を送る青年・渡口淳(伊藤健太郎)が、仲間が襲撃される事件をきっかけに大きく変貌していく。父に小林薫、母に余貴美子を迎えた重厚なキャスト陣の中で、伊藤が約2年ぶりの映画復帰を果たした意欲作だ。
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