あらゆる場面が絵になる、美しい映像に引き込まれる映画。トリュフ取りの老人たちは一般人なのにどこかスタイリッシュで、相棒の犬ビルボがまたとてもかわいい。老人と犬のコンビは商売道具としての関係でありながら、深い絆と愛情が感じられる。 一見ほのぼのとした癒し系の物語に思えるが、題材の白トリュフがクセ者。高額で取引される希少な食材であるがゆえに、取る側と売人の腹の探り合いや縄張り争い、さらにはオークションなど、裏には人間の欲望が渦巻いている。美しい田園風景と、人間の欲望が交錯する不気味なミスマッチが独特の魅力を生み出している。 見終わった後、予想外の感覚に襲われる、不思議で怖さも感じる作品である。

アメリカ料理といえば豪快で大胆、量が多いというイメージが強いが、少し前は料理本や料理番組といったものがほとんど存在しなかったようだ。冷凍食品が奨励され、主婦があまり凝った料理をしないのが当たり前だった時代。さらに、女性の人権がほぼ認められず、料理のプロであるシェフは力仕事とされ男性が主流だった。しかし、そんな時代に風穴を開けたのが、フランス料理を学んだジュリア・チャイルドだった。 彼女は、料理番組のフォーマットを確立した。また番組中に多少失敗してしまっても、そのままそれを活かしてしまう臨機応変な姿勢とパワフルさは、視聴者に親しみと活力を与えたであろう。 さらに、彼女は基本的な手順を丁寧に教えることの大切さを示した。アメリカには家庭科の授業がなく、親から料理を教わる文化も薄いため、彼女の存在は家庭料理の基礎を築く上で重要だったと思われる。料理を通じて女性の社会進出にも影響を与えた彼女のエネルギッシュな生き方と夫婦愛が伝わる、元気がもらえる映画だ。

いわば『クール・ランニング』のソムリエ版とも言える、ジンバブエ出身の4人のソムリエたちがフランスで開催されるテイスティング大会に挑む姿を描いた映画。注目すべきは、彼らの壮絶な背景だ。ジンバブエのハイパーインフレによる惨状から逃れ、家族を養うため南アフリカで難民となり、そこからチャンスを掴んでソムリエの道を歩み始めた彼ら。一人ひとりが家族や親戚を背負い、何かを失いながらも前に進んできた。 最初からワインに興味があったわけではない彼らだが、ワインの奥深さに惹かれ、勉強を重ねていくうちに自然とソムリエを目指すようになったのだろう。 映画の後半では、大会後の彼らのその後も描かれており、大会の結果に関わらず、この経験が彼らの人生やキャリアに大きな影響を与えたことが感じられる。ワインそのものの魅力を知らない人でも、背景や歴史、作り手の思いを知ることでどんどん惹き込まれていく感覚には共感できる。爽やかで心に響く作品である。