
《 菅田将暉 》凄みと無防備さを宿す俳優。
作品と現実の境界が曖昧になっていく-- 《 菅田将暉 》さんを観ていると、何度もそんな瞬間が訪れます。スクリーンの外にいることを忘れ、物語の中に入ってしまっている自分に気づきます。菅田さんの中には、底の見えない凄みと少年のような無防備さが共存している感じがします。第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめキャリアを重ねるごとに、菅田さんの演技は研ぎ澄まされながらも一貫して切実さを感じます。今回は《 菅田将暉 》さん出演作品を厳選してご紹介させていただきます。
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- 作成日時:
- 2026/06/05 17:46
あゝ、荒野 完全版
第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、第72回毎日映画コンクール男優主演賞など、2017年の映画賞を席巻した菅田将暉さんの代名詞的一作。孤児院育ちで何もかもに牙を剥くように生きる沢村新次(リングネーム:新宿新次)を演じるため、クランクインまでの半年間、プロのレフェリーが「プロテストに全員合格できる」と認めるほどのレベルにまでボクシングを叩き込みました。ただ「喧嘩が強い男」ではなく、誰にも渡せない何かを守るために殴り続ける人間の孤独を、菅田さんは拳のひとつひとつに刻みつけています。岸善幸監督の近未来・新宿を舞台にした骨太な物語の中で、菅田さんの体そのものが映画の息遣いになっていた、そんな作品です。
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あゝ、荒野 完全版の★評価を入力する花束みたいな恋をした
第45回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞し、2021年の邦画を代表する大ヒット作となった一本。共通の趣味で結ばれた恋人と同棲し、やがてすれ違っていく山音麦を演じた菅田さんの演技の核心は、「変わっていく人間の内側」を可視化したことにあります。夢を諦めて仕事に埋没するにつれ、麦の目から何かが抜けていく。その「何か」が失われる瞬間を、菅田さんは大仰な演技で示さず、ふとした表情の空白で差し出してきます。坂元裕二さんの脚本が持つ質感をそのまま体に染み込ませ、「こういう人間が本当にいる」と信じ込ませてしまう説得力が、麦という人間をただそこに存在させている。その自然さこそが、この映画を忘れられなくさせているのだと私は感じました。
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花束みたいな恋をしたの★評価を入力する共喰い
菅田将暉さんの映画キャリアの原点ともいえる一作で、第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した作品です。昭和の川辺の集落で、性交時に暴力を振るう父の血を自分も受け継いでいるのではないかと怯え続ける17歳の遠馬を演じています。「父と同じになってしまうかもしれない」という恐怖は、怒鳴ることも泣き崩れることもなく、ただ淀んで積もっていく。その重さの表現が、まだデビュー間もない19〜20歳だったとは信じがたいほどの成熟さを感じました。俳優・菅田将暉の出発点に、改めて息をのみます。第66回ロカルノ国際映画祭でYouth Jury Award最優秀作品賞などを受賞した本作は、菅田将暉という俳優が最初から何かを「持っていた」ことを証明する、貴重な一作です。
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共喰いの★評価を入力するそこのみにて光輝く
第6回TAMA映画賞最優秀新進男優賞、第29回高崎映画祭最優秀助演男優賞など、若手俳優としての菅田さんの確かな評価が積み上がっていった作品だと感じます。刑務所から仮釈放された直後の大城拓児を演じ、軽口を叩きながらも生活の底から浮かび上がれない人間の哀愁を、全身で纏っています。話しかけるときの距離感の詰め方、笑うときに一瞬だけ翳る目――生きることに疲れている人間特有の、細かい体の癖のようなものが全編にわたって染み込んでいました。主演の綾野剛さんとの関係性も、言葉より先に空気が通じ合うような濃度があり、菅田さんの存在が物語の質感を根底から変えていました。
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そこのみにて光輝くの★評価を入力するディストラクション・ベイビーズ
第38回ヨコハマ映画祭助演男優賞を受賞した、柳楽優弥さん主演の問題作です。街中で無差別に人を殴り続ける男・芦原泰良に魅入られ、ともに暴力の中に踏み込んでいく高校生・北原裕也を演じています。見ていて気持ちよくなれない映画ですが、だからこそ菅田さんの演技が際立ちます。裕也が暴力に引き寄せられていく理由は説明されない。それでも菅田さんは、「なぜこの男はここにいるのか」という問いへの答えを、台詞ではなくざわめくような体の動きで示し続けました。賛否両論を呼ぶ作品の中で、菅田さんは一貫して「リアル」な存在感を突き通していました。
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ディストラクション・ベイビーズの★評価を入力する帝一の國
エンターテインメントとしての菅田将暉さんの魅力が全開の一作です。超名門・海帝高校で生徒会長の座を巡り、策謀と友情のはざまを疾走する赤場帝一を演じています。野望丸出し、プライドは天井知らず、それでいてどこか憎めない。笑えるシーンを全力で笑わせながら、ふとした瞬間に帝一の孤独が覗く――そのバランスの取り方が絶妙で、コメディの文脈の中でもしっかり「人間を演じている」菅田さんの技量が光ります。同年「あゝ、荒野」をはじめ複数作での圧倒的な活躍により第42回報知映画賞主演男優賞を受賞した年の一本として、重厚なシリアス作品とは異なる種類の豊かさを、この作品は惜しみなく見せてくれます。
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帝一の國の★評価を入力するアルキメデスの大戦
第43回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞し、興行的にも高い評価を得た一作です。帝大出身の天才数学青年・櫂直を演じた菅田さんは、数式が見える瞬間に目の色が変わるという、知性を「身体反応」として表現することに挑んでいます。大正・昭和の海軍を舞台に、巨大戦艦建造をめぐる不正を数学の力で暴こうとする構図は、直接的な暴力もなければ感情の爆発もない。それでも菅田さんの演技は終始スクリーンを張りつめた空気で満たし続けており、「頭を使う者の凄み」というものがどう映像に宿るかの体現に、私は深く感動いたしました。
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アルキメデスの大戦の★評価を入力する百花
第70回サン・セバスティアン国際映画祭最優秀監督賞(川村元気監督)に輝いた本作で、菅田将暉さんは認知症の母を介護しながら過去の記憶と向き合う息子・葛西泉を演じています。長年抱えてきた母への複雑な感情と、失われていく記憶への寂しさが交差するこの役は、怒りを爆発させてもいけないし、美しく泣いてもいけない。感情のどこにも逃げ場を与えない難役を、菅田さんは表情の下に言葉にならないものを溜め続けることで演じきっています。クライマックス、縁側から見える花火の「下半分」だけが、母が幼い泉と見た記憶の花火だったと気づいた瞬間に泉が流す涙は、それまでのすべてが一気に解けていくような心情となりました。
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百花の★評価を入力する銀河鉄道の父
第47回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した本作で、菅田将暉さんは宮沢賢治を演じています。役所広司さん演じる父・宮沢政次郎との関係が主軸の物語の中で、菅田さんは賢治の「分かりにくさ」を真正面から引き受けました。信仰に傾いては家を飛び出し、農民のために体を壊し、夢と生の間を揺れ続ける賢治を、ロマンティシズムに逃げることなく演じています。「偉人」として完成された人間ではなく、迷い続けた一人の息子として描かれた賢治の姿は、役所広司さんとの静かなぶつかり合いの中でより一層輪郭を帯びていきました。
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銀河鉄道の父の★評価を入力するCloud クラウド
第81回ヴェネツィア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門でワールドプレミア上映を果たし、第97回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表に選出された、黒沢清監督との初タッグ作品です。転売業を営む男・吉井良介が、匿名の悪意に晒されるうちに日常が静かに崩壊していく姿を演じています。菅田さんがこの作品で試みたのは、「感情を持ちながら、それを読ませない」という難しい表現でした。何を考えているか分からない不気味さと、それでも見続けさせる引力が共存する吉井は、これまでの菅田将暉のどの役とも違う手触りを持っています。新しい段階へと踏み込んだ菅田将暉さんにこれからも惹かれていきます。
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