
映画が終わった瞬間、現実が始まる──『ブラック・クランズマン』の鋭さ
『ブラック・クランズマン』、いやぁ、おもしろかった。 そして改めて思う。 やっぱりスパイク・リーという監督、自分はかなり好きなんだなと。 何が好きかと言うと、映画の見せ方が上手い。 映像の切り返し、音楽の使い方、テンポ感、役者の配置。どれも独特なんだけど、決して観客を置いていかない。 むしろ「映画を観ている」という楽しさを思い出させてくれる。 そして何より、自分のスタイルを持っている。 「これが俺の映画だ」 という芯がある。 でもそれを偉そうに押し付けてくる感じがしない。 そこが良い。 本作も、もっとエンターテインメント寄りにすることもできたと思う。 逆にもっと社会派ドラマとして硬派に作ることもできたはずだ。 しかし、そのどちらにも振り切らない。 スパイク・リー流のバランスで成立させている。 だから観やすいし、同時に考えさせられる。 物語は実話をベースにした潜入捜査もの。 黒人刑事が電話でKKKに潜入し、白人刑事が実際に現場へ潜り込むという、設定だけ聞いても十分おもしろい。 これだけなら痛快な潜入サスペンスとして成立する。 だが本作はそこから一歩踏み込む。 黒人差別というテーマを、過去の出来事としてではなく、現在進行形の問題として描いている。 そこがスパイク・リーらしい。 また主演のジョン・デヴィッド・ワシントンも良かった。 最初はどこか飄々としている。 でも次第に存在感が増していく。 父親であるデンゼル・ワシントンほどの圧倒的スター性とは違う。 しかし独特の雰囲気がある。 少し力の抜けた自然体の魅力というのかな。 その空気感がこの作品にはよく合っていた。 そしてやはり語らずにはいられないのがラスト。 本当に見事だった。 映画の中の物語は終わる。 普通ならそこでエンドロールへ向かう。 だが本作は違う。 観客を現実へ引き戻す。 それまで観ていた映画の世界と、今自分たちが生きている世界を直結させる。 あの瞬間、スクリーンの向こう側の話ではなくなる。 「昔は大変だったね」 では終われない。 むしろ、 「今はどうなんだ?」 と問いかけられる。 その鋭さにゾッとした。 映画を観終わったはずなのに、映画が終わらない感覚。 まさにスパイク・リーがやりたかったことなのだろう。 『ブラック・クランズマン』は、潜入捜査サスペンスとしても十分おもしろい。 笑える場面もあるし、テンポも良い。 しかしその奥には、監督自身の強いメッセージがある。 それを説教臭くせず、映画として成立させているところが見事だ。 そしてラスト。 映画から現実へ。 スクリーンから世界へ。 あの締め方は忘れられない。 「世界よ、どうなってるんだ。」 そんな言葉が自然と出てしまう、鋭くも力強い傑作だった。
たくさんの「いいね」ありがとう!
122
- 作成日時:
- 2026/06/10 21:50
ブラック・クランズマン
いやぁ、おもしろかった。スパイク・リーの演出の上手さ、映画の見せ方の上手さというのが、どうも自分の好みにドンピシャ。かつ「自分のスタイルはこうだ、これ以外のことは期待されても困るぜ」みたいなスタンスも、偉そうでもなくなんだか好印象なのだ。今作も、もっとエンタメ的に、もしくはもっと硬派にも出来たような気もするのだけど、そこを自分流に描いているようだった。だからこそ、黒人差別をテーマにした本作を作れたのかなとも感じる。あくまでも監督の表現したいことで、観衆の期待するものを見せたいわけではない…ような、勝手な捉え方だが作家性をしっかり出している、そう感じた。デンゼル・ワシントンの息子、芸歴はそう厚くもないだろうけど、なかなかな独特な雰囲気がある。まー、それにしてもラストの締め方の絶妙さよ。映画から現実へと引き戻させる。世界よどうなってるんだ。
あなたも作品の評価を入力してみませんか?
ブラック・クランズマンの★評価を入力する


