
山田洋次監督『TOKYOタクシー』感想|昭和パートが心に残る理由
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- 作成日時:
- 2026/06/27 18:14
TOKYOタクシー
フランス映画『パリタクシー』を原作にしながら、山田洋次監督らしさを存分にまとった一本だった。 現代パートは『家族はつらいよ』シリーズのスピンオフを観ているような空気感。木村拓哉演じるタクシー運転手・宇佐美浩二と、その妻を演じる優香のやり取りも、どこか山田組おなじみの家族劇を思わせる。 『パリタクシー』の印象的なセリフをそのまま生かした場面もあれば、日本ならではの価値観へ丁寧に置き換えられたシーンも多い。 特に心に残ったのは、倍賞千恵子演じる高野すみれとの別れ際だ。原作とは異なり、日本版では「この一日の終わりを老人ホームで迎えたくない」と子どものように駄々をこねる。その甘えを宇佐美がきっぱりと受け止める場面は、まさに山田洋次作品らしい人情味があふれていた。 さらに、すみれが宇佐美に「愛をまっすぐ言えないと奥さん悲しむよ」と諭す場面も印象深い。まるで寅さんがそのまま語りかけているようで、思わず頬が緩んでしまった。 そして何より強く惹かれたのは、昭和を描いた回想パートだ。ここは個人的には原作以上の見応えがあった。 日本家屋や集合住宅の閉塞感を映し出す美術や撮影、湿度まで伝わってきそうな陰影のある画づくり。そして登場人物たちが抱える息苦しさまで画面全体から漂ってくる。昭和という時代の空気を見事に映像化していて、正直このパートはもっと観ていたかった。 蒼井優の昭和らしい言い回しや所作も見事だったし、迫田孝也のじわじわと不気味さを増していくDV夫ぶりにも圧倒される。 また、明石家さんまと大竹しのぶが電話で会話するシーンを、そのまま並び順まで遊び心を持たせたクレジットで締めくくる演出には思わずニヤリ。 『パリタクシー』を忠実にリメイクした作品というより、日本という土地と文化、そして山田洋次監督の人生観を重ね合わせることで、新たな作品へと生まれ変わらせた一本。原作を知っている人ほど、違いを楽しみながら味わえる映画だった。
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