
Texas is good! Everything is big!とラスト・ショー
テキサスという土地は、いつも少しだけ風にさらされています。 誇り高く、力強い。けれど、どこか孤独で、傷つきやすい。 2026年のW杯で日本人サポーターが放った 「Texas is good! Everything is big!」 という6語のミームは、その風にさらされた心を一瞬だけ温めました。 この素朴な賛歌を見たとき、私は1971年の映画『ラスト・ショー』を思い出しました。 舞台は1952年のテキサスの小さな町アナリーン。 70年以上前の世界ですが、そこに描かれる“誇りの揺らぎ”は、現代のテキサスと驚くほど重なります。 【『ラスト・ショー』が描いた「地方の死」】 ピーター・ボグダノヴィッチ監督の『ラスト・ショー』は、アメリカン・ニュー・シネマの中でも異色の作品です。 都市の混乱ではなく、「地方の静かな崩壊」を描いています。 町の映画館とビリヤード場を営む人気者サム(ベン・ジョンソン)は、共同体の象徴でした。しかし彼の死をきっかけに、町は急速に活力を失い、登場人物たちは方向性を見失います。 サムの死は、テキサスの誇りの支柱が折れる瞬間を象徴していました。 そしてこの構造は、現代のテキサスが抱える文化的な不安と驚くほど似ています。 【テキサスの誇りは、どこで揺らいだのか】 今回W杯の開催地となったテキサスは、アメリカの中でも特異な文化的アイデンティティを持つ州です。 ・かつて独立国だった歴史 ・フロンティア精神 ・“Everything is bigger in Texas”という自己像 しかし近年、価値観の急激な変化がこの誇りを揺らしました。 銃文化や石油産業への批判、保守的家族観への否定── テキサスの人々は、自分たちの文化が軽視されていると感じる場面が増えたのです。 これはまさに、 サムが死んで町が衰退していく『ラスト・ショー』の構図と同じと言えます。 【そこに突然現れた“6語の賛歌”】 そんな中で、2026年のミームが生まれました。 「Texas is good! Everything is big!」 政治的な議論ではなく、純粋で素朴な“テキサス賛歌”。 外国人(日本人)が偏見なく、素直にテキサスの良さを肯定したこの6語は、 テキサスの人々にとって久しぶりの“文化的自己肯定”になりました。 『ラスト・ショー』の世界で言えば、 サムが死んで失われた誇りが、70年後に別の形で一瞬だけ戻ってきた。 そんな象徴的な出来事だったのではないでしょうか。 『ラスト・ショー』は、誇りが崩れていく瞬間を描いた映画。 「Texas is good! Everything is big!」は、誇りが一瞬だけ回復した瞬間を象徴するミーム。 この二つを並べると、 テキサスという土地が抱える“誇りと喪失”の物語が、70年の時を超えて一本の線でつながります。 テキサスは誇り高い。 けれど、傷つきやすい。 強い。けれど、孤独だ。 だからこそ、外国人の素朴な6語が、あれほど深く刺さったのでしょう。
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- 作成日時:
- 2026/07/15 13:28
ラスト・ショー
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