
覗くなキケン、病的な映画三選
“怖いもの見たさ”が止まらない! 怖いのは苦手だけど、なぜか気になってしまう。 そんな“怖いもの見たさ”を無性にくすぐる映画ってありますよね。 今回は、そんな好奇心に応える“病的”な映画を3本ピックアップ。 ●過剰な承認欲求の果てに、自傷行為へと走る女 ●邸宅で人間を“犬”として飼育する上流階級の男 ●元被虐待児のパパ活女子と、コスプレ殺人鬼が出会う禁断のボーイ・ミーツ・ガール いずれも、観ていて不安に駆られたり、生理的な嫌悪感を覚える場面があるかもしれません。 けれどその歪さの奥には、“現代社会の病巣”が染み出しています。 ホラーが苦手な人にも大変おすすめですよ(暗黒微笑)
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- 作成日時:
- 2025/05/23 15:38
シック・オブ・マイセルフ
- 制作年:
- 2022年

「注目されたい、愛されたい」 その欲望が肥大化した先に待っているのは、破滅だった。 主人公シグネは、アーティストとして成功を収めつつある恋人に激しく嫉妬する。 自分も注目を浴びたいと願う彼女は、やがて薬物に手を出し、“病気を演出”することに。 世間からの関心を得ることに成功した彼女だったが、その欲望はとどまることを知らず、破滅に向かってエスカレートしていく。 注目は彼女にとっての快楽。 まさに“究極完全体かまってちゃん”。 演出した自分らしさで注目を集めようとするその姿は痛々しく、笑えそうで笑えない。 観ていて『もうやめてくれ』と感じるはずです。 まさに“ホラーとコメディは紙一重”を体験できる一本です。 監督は『ドリーム・シナリオ』のクリストファー・ボルグリ。 SNS時代の承認欲求やルッキズムを、北欧らしいミニマルな演出とブラックユーモアで描き出します。 不快なのにクセになる、“承認欲求ホラー”の決定版。 こういう作品がしれっと出てくるから、ヨーロッパ映画はやめられませんね。
犬人間
- 制作年:
- 2022年

「マチアプで出会った彼は、ハンサムで、お金持ちで、人間を飼ってる」 女子大生シグリッドが出会ったのは、理想的な恋人クリスチャン。 しかし彼の邸宅には、犬の着ぐるみを着て“飼われている”中年男性がいた。 クリスチャンは彼を「飼い犬」として紹介し、それがまるで自然なことのように振る舞う。 困惑しながらも、シグリッドはなぜかその関係を受け入れ、交際を続けてしまうのだが……。 一見ジョークのような設定ですが、その裏には予想をはるかに超える狂気とスリルが潜んでいます。 前半のシュールなコメディ調から、後半は一転してサイコホラーへと変貌。 なぜこの男は人間を犬として飼っているのか? 支配と服従という関係から浮かび上がってくる、歪んだ“人間らしさ”にゾッとさせられます。 『ムカデ人間』や『Mr.タスク』に通じる異常性を持ちながらも、北欧映画らしい抑制の効いたトーンも魅力的。 単なるキワモノ映画と侮るなかれ。 “オチ”までたっぷりと闇を堪能できる一本です。 私はラストで変な声が出ました。
PARALLEL −パラレル−
- 制作年:
- 2021年

元・被虐待児のパパ活女子と、アニメキャラに扮して殺人を繰り返す青年が出会う、禁断のボーイ・ミーツ・ガール。 現実に窒息寸前の二人は、互いの傷に引き寄せられるように、次第に心を通わせていく。 だが、それぞれが抱える“本当の姿”を知ることは、別れを意味していた。 アニメカルチャー、スプラッター、そして純愛。 一見バラバラな要素が混ざり合い、病的で歪なのに、どこか美しい独特の世界観を生み出しています。 毒々しいネオンカラーに彩られた殺人現場のセンスなども抜群です。 “親ガチャ大爆死”では語りきれない、日本社会の病巣と孤独。 舞というか細い光が、虐げられ続けた人間の抱える澱みへと差し込む時、そこに静かな共鳴を観るはずです。 コスプレ殺人鬼が大暴れするスプラッター映画かと思いきや、不意に刺さる切ないラブストーリーが超ベリーグッド。 世界と一人で戦っていた男に、彼女が与えた“生きる意味”……その確かな温度をぜひ感じてみてください。